“ecofuroshiki”人の心の力、ブラジルの自然の風呂敷

鎌谷ソフィア南華
ブラジル サンパウロ在住
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私はブラジル生まれで、サンパウロの広い町に住んでいます。 「私はなぜブラジルで生まれたのだろうか」と日々考えながら生活しています。おそらく多くの人は、伝来の宿命的な背景があってその地に住んでいるのではないでしょうか。もし私が日本に生まれていたなら、これだけ美しい風呂敷の物語に出会うことはなっかたのかもしれません。そんな複雑な思いが脳裏をよぎります。
私と風呂敷との出会いは、子供のときの体験と記憶による糸に結ばれています。そのことが大人になるまでつながっています。思いおこせば、〈日本の可愛いもの〉を、おばあちゃんに風呂敷で包んでもらってたことがきっかけでした。
 
その思いが高じて、大学ではグラフィックデザインを勉強することになったのです。日本の可愛いものの世界のことを知り理解するために研究を続けました。そのなかで最も大きな憧れと興味は、日本の伝統パッケージの世界にありました。
 
大学卒業後、県費留学生として日本に行くチャンスを得ましたが、1995年1月17日、神戸で大地震が起き、実現するか否か不明なまま待機せざるを得ない状況が続きました。しかし、神様は私にご褒美を授けてくれました。日本行きがやっと実現したのです。そして一年の滞在期間中に多くの人と出会い、さまざまな話を聞き、自分の夢を追い求めました。留学が終了してブラジルに帰国した後、大学の指導教授から大学の先生の仕事を奨められ、日本での勉強の成果が嬉しい出来事として結実しました。すでに18年経ちました。
 
2008年6月、「日本人ブラジル移民100周年」の時、初めて風呂敷をテーマにしたスピーチをする機会を得ました。たった一枚の布にどれだけ温かい心を包むことができるかを話しました。最もシンプルな日本の伝統パッケージ・風呂敷にまつわる物語がここに始まったのです。
 
ブラジルのさまざまな町を訪れることができたこと、ブラジルの大学生たちにその美しさを教えたこと、テレビ番組に出演したこと、さまざまな雑誌に取り上げてもらったこと、ブラジルの環境省のコンクールで風呂敷紹介のビデオを制作し最優秀賞を獲得したこと、風呂敷に関する物語はまだまだあります。自分が好きなことだったら、さらに勉強する意欲がかきたてられます。
 
その思いは、2008年9月に京都を訪ねることにつながりました。たくさんの風呂敷店で話しをうかがうことができました。私にとって風呂敷との出会いがあったからこそ、現在もブラジルで美しい風呂敷の夢を描き続けることができているのです。日本の伝統パッケージを研究していたとき、岡秀行著『包むー日本の伝統パッケージ』という本に出会いました。その中に「包む」というの漢字のなりたちが紹介されています。母親が妊娠している子供を自分の体の中で大切に包んでいることを意味しています。それは人間の生命にとってもっとも自然な魂です。私は風呂敷がその同じ魂を持っていると信じています。
 
日本においては、風呂敷を今一度見直すことは大事なことですが、風呂敷がもつ魂の根源的な意味を理解しなければ価値を発見することはできません。それはとてももったいないことです。

私がブラジルで “ecofuroshiki”の アイデンティティを表現するために、シンボルマークのデザインは、ハートの形が丸くかこまれていることを大事にしました。この形は心を意味しています。テーマカラーはブラジルの自然の緑の色です。”eco”の言葉には二つの意味があります。ひとつは、風呂敷を通して、人間同士がつながってもっと環境のことを考えて生きること。そして、自分の気持ちを心から相手に伝えることです。

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多くの人が発する”eco”の声は、あちらこちらから風呂敷が発するエコーとして聞こえてきます。私は人の心のありかを信じています。それが風呂敷の本当の心だからです。私がもち続けている夢は、風呂敷の文化をブラジルの人たちに受け入れてもらうことです。
 
日本でお会いしたことがあり、2015年2月に夢の世界へ新しいデザインを拓くために旅立ったKENJI EKUAN(故・栄久庵憲司氏)からうかがった“人の心と自然のつながりは宝物である”。それは私の心に深く刻まれている言葉のひとつです。私は人の心と自然を風呂敷で結ぶために、これからもブラジルの風呂敷で頑張ります。

風呂敷への感謝の気持ちと、夢を持ち続けるために、下記ホームページに想いを記しています。
www.furoshiki.com.br

www.instagram.com/ecofuroshiki にはいろいろな画像を紹介しています。ぜひ見てください。
 
ブラジルの新しい”ecofuroshiki”が、日本の人たちの笑顔と嬉しい”eco”の声になって、風呂敷が発するエコーがブラジルで高らかに聞えるように祈っています。